(1038)パーフェクトデンキ 藤沢店 佐藤さんからの電話-3

女性の声。
「パーフェクトデンキ藤沢店、佐藤と申します。お預かりしておりましたお品物が戻りましたので、ご連絡させて頂きました。ご来店お待ちしております。では、失礼します」
留守電を聞き、「0466-××-××××」からの電話が、単なる間違いであると確信した。
これで心置き無く飲める。

友人に瓶ビールを注ぎつつ、「お前、最近、何か面白いことあったか?」と聞いたところ、「そんなもん、無いよ…」。
2年間、付き合っていた女に振られたらしい。
「そうか…。ちなみに、どんな人やったん?どんな楽しい思い出がある?」などと根掘り葉掘り聞き、いじり倒し、最後に泣かしたら面白い。
が、ちょっと待て。
そんな下らないことを楽しむ前に、俺はパーフェクトデンキに電話を掛けるべきだ。
会ったこともない佐藤さん、会ったこともない客が困っているだろう。

「まぁ、お前の話は後で適当に聞くから。俺、ちょっと電話せなあかんねん」
店の外に出て、リダイヤル発信。
「佐藤さんですか?1時間ほど前に電話を頂いたkrmと申します。あの、佐藤さんが掛けられたの、間違い電話やと思いますよ。自分はそちらに何も依頼していませんので」
そう伝えたい。
が、繋がると同時にアナウンスが流れた。
「お電話有り難うございます。パーフェクトデンキ藤沢店です。お客様からの電話を順番にお繋ぎしておりますので、そのままお待ち下さい」

気に入らない。
俺は間違い電話を掛けられた側だ。
間違い電話を掛けられた上に、わざわざ「佐藤さん、電話番号を確認して、お客さんにもう一度電話して下さいね」と親切に伝えてあげようとした…にも関わらず、待たなければならないのか?
「アホらし」
店に戻る。

「ほんで、お前が振られた話をじっくり聞かせてもらおか」
友人の失恋話を肴に酒を飲む。
「うん、複雑な環境で育った人でな、若い時は柄でも無く水商売したり、今は朝の早くからスーパーで働いてて、色々苦労してるんやわ…。なんかなぁ、ええ人やし支えたなるやん…」
語る友人に対し、適当に相槌を打ちながらも、どうも気になる。
パーフェクトデンキの佐藤さんと、彼女の客が。

スマートフォンを持って席を立つ。
「また後で聞かせてくれ。ゆっくり聞かせてくれ。俺、電話せなあかんねん」
ちょっとぐらい待ってもいい。
再度、パーフェクトデンキに発信。
と、またアナウンスが流れた。
「パーフェクトデンキ藤沢店です。只今、営業を終了しており…」

「おい、まだ20時過ぎやぞ…?」
かなり気に入らない。
間違い電話を掛けられた俺が、わざわざ「間違い電話ですよ」と指摘するのに、どれだけ高いハードルを設けているのか?
パーフェクトデンキ藤沢店様の佐藤様と会話させて頂くには、俺の様な身分の低い者は待たせて頂き、しかも、営業時間中ではならないということか?
なら、明日、パーフェクトデンキ藤沢店様の営業時間中に電話を掛けさせて頂き、どれだけ待たせて頂いても感謝し、やっとのことで…だ。
恐れ多くも、あの佐藤様と…、本当に恐れ多くも佐藤様と話をさせて頂けるのか?
「おちょくってんか?」だ。

店に戻り、「飲めよ、飲めよ」。
友人に瓶ビールを注ぐと、「なぁ、もう1軒行けへんか?」。
「俺、明日なぁ、仕事、早いねん。でも、ええわ」
「おぉ、飲もうや。飲んで忘れたいことがあるからなぁ」
「女のことか?」
「ま、ま、ま、それはええやんけ」

2軒目に向かって、友人とふらふら歩く。
寒いが気持ちいい。
ただ、ふと脳裏を掠める。
パーフェクトデンキ藤沢店の佐藤さんと、彼女の客。
「また明日、電話してみよか。佐藤さんもお客さんも困らんように…な」

次の日、すっかり忘れてしまう。
その次の日も、すっかり。
更に次の日もその次の日も、パーフェクトに忘却の彼方。
思い出したのは、1ヶ月後。
「今更、佐藤さんに電話してもなぁ…」と思う。
それにしても、お客さんは、佐藤さんから無事に品物を受け取れたのか?
うん。
まぁ、いい。

※この記事に登場する企業名、個人名は仮名です。ただ、本当にあった話です。

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