(284)伊勢志摩を走る。~2日目 海を見ながら~

第2エイドステーションに向けて、我々(おっさん×3)は走り出した。
ら、すぐに登り。
これがまたしつこい。
「かったるいなぁ」と思いながらクランクを回していると、先頭のAさんがスピードを上げた。
次を走るBさんは、逆にスピードがどんどん落ちていく。

「あぁ、Aさん、自分の世界に突入してもうたな」。
彼はもともとマイペースなタイプだ。
ロードバイクに乗っている時に限らず、飲みに行っても。
ただ、先ほど第1エイドで「3人とも、ある程度まとまって走りましょう」。
珍しく協調性を見せ、確かにそう言っていたはずだが、俺の気のせいか?
あっという間に、Aさんの後ろ姿が遠のいた。

残された俺とBさん。
「Aさんに追い付こか」と、俺はダンシングを始め、Bさんを抜かす。
が、クランクを回しては止め、回しては止めを繰り返し、Bさんを待ちながら登ることにした。
ほったらかすのは、何かかわいそうな気がして。
しばらくして、「遅れてすみません」。
Bさんが前に出た。
後ろから見ると、必死になって脚を回している。
意味があるのかわからないが、やたらめったらシフトチェンジを繰り返し、もがき続け、なんとか下りに入った。

海岸沿いの平坦路を進む。
Bさんは相変わらず必死で脚を回しているが、俺は今回インナーで走ることを決めていたので、あまりスピードは出ない。
時速30㎞ぐらいになると、クランクを回しても空回りになる。
それでもBさんから遅れることはなかったので、余裕をかまして景色を目で楽しんだ。
空を見上げる。
今回のイベント、伊勢志摩サイクリングフェスティバルの1週間ほど前から、天気が気掛かりだったが、有難いことに当日は晴天。
スタート時は少し寒く、ウィンドブレーカーを羽織っていたが、だんだんといい感じに暖かくなってきた。
「いいサイクリング日和やなぁ」と思う。

左手に展開する海岸を眺めながら走っていると、「え!?」。
道の脇にロードを立て掛け、右手をひょいと上げたAさんが佇んでいる。
「ひとりでかなり先の方を走ってるんやろなぁ」と思っていたが、俺とBさんを待っていてくれたようだ。
「お疲れ様です」。
「お疲れ様です。どうしたんですか?」。
「景色がいいので、眺めながら待とうと思って」。
ちらほらと我々の横を通りすぎる自転車乗りが目についたが、ここらで小休止も悪くない。
俺は、ウィンドブレーカーを脱いでサコッシュに入れたかったので、「じゃあ、ちょっとゆっくりしましょ」。
Bさんは、パンパンになったリュックからウェアを出したり入れたりしている。
行きのサイクルトレインの中でもそうだったが、暇さえあれば荷物を整理しようと、出したり入れたりを繰り返す。
意味があるのか?
まぁ、そもそも、無駄に荷物が多い。
「この人は水の中でせわしなく動き続けるゲンゴロウみたいなもんや」と、特に関心を持とうとせず、俺は海に目を向けた。
風はあまり感じない。

「こんにちはー」。
大きな声で、大柄なロード乗りの男性が我々に声を掛けてきた。
一瞬、「誰?」と思ったが、服装(サイクルジャージ)を見てわかった。
おそらくイベントのスタッフの方なんだろう。
スタートからここまで、スタッフの方が参加者を誘導したり声掛けをしているところを何度か見た。
サポートをしてくれるスタッフさん。
有難い。
スタッフさんが続けて口を開く。
「いやー、今日はいいサイクリング日和ですね」。
うん、それはさっき俺も思った。
「私でよければ、皆さんの写真を撮りましょうか?」。
心配りはとても嬉しいが、なんとなくそういう気分じゃない。
「いえ、結構です」と、頭を下げながら俺は答えた。
少し遅れて「結構です」とBさんも続く。
また少し遅れて、Aさんが「お願いします」。
意思の疎通が全然取れていない。
それでも、スタッフの方は快く写真を撮ってくれ、「次のエイドステーションは、この道を真っ直ぐ。平坦な道をあと3㎞ぐらいですよ。皆さん、頑張って!」と言い残し、去っていった。

「じゃ、そろそろ出発しましょか」と、第2エイドに向けて我々も脚を回したが、途中で「ほんまに残りたった3㎞か?」と首を捻る。
景色が変わらない道を進んでいるからか、妙に長く感じる道のりとなった。

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