(623)友達が減る瞬間-2

鉄板を囲む友人A&Bと俺。
男性店員が鉄板にもやしを敷き詰め、ホルモンが乗った皿をテーブルに置いた。
「まず最初に塩ダレから焼いていきますね」。
以前にも食べたので美味いのはわかっているが、「これ、美味そうやわぁ」。
鉄板の上でテカテカに光るホルモンに見入ってしまう。

ビールを少し喉に流し、男性店員からのゴーサインを待っていると、「ハラミが焼き上がりましたので、どうぞ」。
我々の箸が動く。
もやしと一緒にハラミを掴み、にんにくダレをほんの少し付け、そして食らった。
「あぁ…、美味いわぁ…」。

ハラミの余韻に浸った後、ビールジョッキを口に付ける。
「最高やわ…」。
四ツ橋線の難波駅から走ったきた甲斐があった。
俺は報われた気分になった。

「マルチョウ、焼き上がりました」。
次々とホルモンを提供され、食って飲んでを繰り返していると、Aが口を開いた。
「なぁ、B。この前のレース、馬券、買った?」。
これを契機にA-B間で競馬の話が始まる。
競馬をしない俺にはまったく意味がわからず、ホルモンを口に含みながら、席の近くに設置されたテレビに目を向け、「ちびまる子ちゃんって、まだやってたんやなぁ」。

「ツラミが焼けました。どうぞ」。
もやしと共に箸で掴み、ツラミを噛み締める…が、AとBはまだ競馬の話で盛り上がり続けている。
俺にはどうしようもない話題が続いているのだ。
「とりあえず、俺はちびまる子の続きを…」と思ったところで、溜め息が出た。

「また今日もか…」。
競馬の話をするA&Bの前で黙るしかない俺(ちびまる子に目をやりつつ)。
居心地が悪い。

Aとの付き合いは長い。
中学からだ。
お互い大人になり何度も飲んだが、俺が馬券を買わないことをAは知っているはず。
にも関わらず、競馬の話を延々と語るAに対し、「どういう精神構造をしてるのか?」と疑問を感じる。

疑問を感じたのは今回が初めてではない。
Aに「飲みに行こうや」と誘われると、毎回毎回だ。
俺が競馬に興味が無いことをわかっているはずなのに、楽しそうに競馬について語るA。
対応に困り無言になる俺の姿を見て、Aは何も感じないのだろうか?

まぁ、何も感じないのだろう。
周りがどう思うかなど関係無い。
ただ、自分が楽しければいいのだろう。

根拠の無い自信を持った坊やや、わがままが通じて当たり前と思っているお嬢ちゃん。
それが許される年齢の子が「周りなんかどうでもええ。自分さえ楽しければええ」と思うのは許容できる。
ただ、Aは40を過ぎ、嫌でも大人として見られる年齢だ。
いい歳して「自分中心。自分が世間や人様に対し主導権を握っている」と勘違いしている人間を目の当たりにすると、俺は素直に感じる。
「気持ち悪い…」と。

「もう帰ろか」とも思ったが、まだホルモンのコースは続くのだ。
しっかりと食いたい。
「まぁ、そのうち競馬の話も終わるやろ。我慢や」と自分に言い聞かせる。

競馬の話で盛り上がるA&Bを横目に、ホルモンを食いビールを飲みながら、目線の先はちびまる子。
どうやらテレビの音声は出力されていないようで、絵だけでストーリーを推理しなくてはならない。
仕方が無い。
「今、まる子が友達の家に行って、それから…」と考えていると、隣で長々と続いた競馬の話がやっと終わった。

そして、またAが口を開く。
「昨日、パチンコ行ってなぁ」。
天下を取ったような顔で、「久々にしっかり勝ったわぁ」。
俺はパチンコを打たない…。
それをAは知っているはず…。

つづく

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