(624)友達が減る瞬間-3

ホルモンを口に含み、噛むたびにその旨味を感じる。
ハイボールを喉に流し、「あぁ、美味いもん食って飲んで最高やわぁ」。
本来はそう思うのだが、今回は違う。
隣で楽しそうにパチンコを語る友人A。
こいつは害悪だ。

俺はパチンコを打たない。
正確には、15年ほど前にやめた。
仕事が忙しく、また仕事での収入に満たされると、パチンコ屋に足が向かなくなった。
まぁ、趣味は人それぞれなので、Aがハンドルを握り、数字が3つ揃うことに一喜一憂するのは自由だ。
しかし、俺がパチンコを打たないと知っていながらも、堂々とパチンコの話を続けるAが気持ち悪い。

この日に限らず、友人A&Bと俺の3人で飲む機会は、過去に何度もあった。
そのたびに、Aは競馬の話をBに振り、延々と語り合う。
競馬に興味が無い俺は、ただ口ごもるだけ。
Aがパチンコについて語るのも、今回が初めてではない。
ただ、パチンコについては、俺だけではなくBも興味が無いので、競馬よりかは短時間で話が終わる。

Aが口を閉じた。
「やっとパチンコの話が終わったか」と心底ほっとする俺。
やっと、美味しいものを美味しく食べて、会話に花を咲かせながら飲めるのだ。
そう前向きな気持ちになったところで、「では、黒ダレのホルモンを焼いていきますね」。
男性店員がホルモンを焼き始めた。
「この味付けも美味いねんなぁ。さぁ、美味しいものを楽しく食べて飲もう」。

鉄板の上で焼かれるホルモンに目を向けながら、「早く焼き上がれへんかなぁ」と思っていると、Aが口を開いた。
「なぁ、B。最近、ゴルフ行った?」。
俺はゴルフをしない…。
Aはそれを知っているはず…。

「また始まったか…」。
ゴルフの話は長い。
過去の経験からわかる。
で、満足するまでゴルフについて語った後、Aは俺にこう言うのだ。
必ず。
「お前もゴルフしろよ」と。
仕事以外の時間をどう使うかは自分が決めることであり、俺はサドルに股がってクランクを回すことを選んでいる。
自分の時間をどう使うかについて、他人にとやかく言われたくないし、そもそも言うべきではない。
自分が世間や人様に対し主導権を握っていると勘違いしている人には通じないだろうが。

美味いホルモンが不味く感じる。
隣でBを相手に長々とゴルフについて語っているAが、美味いホルモンを不味くさせている。
俺は無言になり、席の近くに設置されたテレビに目をやる。
「あぁ、サザエさんって、まだやってたんやなぁ」。

A-B間で、ゴルフの話は続く。
俺は特に興味も無いサザエさんを観ているが、ゴルフの話はもっと興味が無い。
サザエさんが唯一の救いのように思えた。

つづく

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