(669)足の突き指と向き合う日々-1

5月5日、夜のこと。
家用の安物ジャージを脱ぎ、「そろそろ風呂入ろうか」と浴室に向かったが、「そうそう、新しい歯ブラシを買ったんやわ」。
部屋に戻り、鞄の中からビニール袋を取り出して、また浴室に向かう。
「風呂に入る前に気付いた俺、ファインプレー」などと自分を褒めつつ、左足から浴室に踏み入れ、次に右足を…のタイミングで爪先に激痛。
「グガ…グ…」。
浴室の敷居を蹴り上げた。
俺はその場にへたりこみ、軽く悶絶。
5分後に復活し、風呂に入って普段通り就寝。

そして、5月6日。
「あぁ、今日も清々しい朝だね」と布団から出て、立ち上がる…タイミングで右足の爪先に激痛。
「ガガガ…」。
布団の上で悶絶。
半泣きで右足に目をやると、人差し指の付け根がパンパンに腫れ上がっているではないか。

目を背けたくなる。
あまりにも痛々しい(実際に痛い)。
また、患部を庇いつつ立ち上がるのも困難だ。
「もう嫌やわ…」。
「痛いん、嫌やわ」。
不貞腐れた俺は布団の上に寝転がり、「今日は家から出たくないわ」と思う。
しかし、「足の突き指のせいで仕事を休もう」が、社会で通用するだろうか?
通用するわけがない。

頭の中でシミュレーションを繰り返した後、右手、左手、左足を駆使して、患部を庇いつつ立ち上がる。
「OK。立てた」。
小さな達成感に満たされたまま朝風呂に入り、着替えを終えて家を出よう…としたが、ここで新たな問題が発生。
右足が腫れているせいで、靴が履けない。
「あかんわ…」。
「もう嫌やわ…」。
「足の突き指のせいや。仕事休もう…」。
俺の心は砕けた。
が、「足の突き指で仕事休む?お前、社会人何年目やねん?」。
脳内に、もうひとりの俺の声が響いた。

靴の紐をほどき、痛みに耐えながら足を通す。
とりあえず通勤できる状態にはなったが、歩ける自信は無い。
「今日は無理せず休んどけよ。自分を労れよ。愛せよ」。
「おいおい、足の突き指なんか、休む理由として成立せえへんやろ?」。
葛藤を抱えたまま、俺は玄関を開けた。

右足を引きずって歩く。
少し進んでは立ち止まり、「痛いよ…」。
少し進んでは立ち止まり、「痛いよ…」。
一歩毎にいちいちダメージを食らうため、どうしても歩くスピードは遅くなる。
幸い、家と会社は近いが、それでも「このペースやと、会社まで5年ぐらい掛かるわ…」。

今、俺が置かれている状況は、かなり悲惨だ。
自覚している。
では、どう打開すればいいか?
立ち止まって考える。
「やっぱり、タクシー拾うしかないか。近くやけど」。
自分なりに結論を出す。
と、「金が勿体無い」。
耳元で、もうひとりの俺が囁いた。

つづく

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