(670)足の突き指と向き合う日々-2

5月6日。
右足の突き指が辛い。
通勤中、歩く度に爪先に痛みを感じ、なかなかの拷問を味わった。
会社に着くと、俺の仕事はパソコンの前で座り続けるだけなので、痛みからは解放される。
が、たまに足を組む際に、「アッ…」と叫びそうになった。
他人から見ると、「こいつ、ひとりで何を感じてるねん?」だろう。

ただひたすら画面と向き合い、キーボードをパチパチと叩く。
足を動かさず大人しくしていれば、痛みは感じない。
「じっとしとけ」。
自分にそう言い聞かせ、珍しく仕事に集中していると、いつの間にか正午。

「吉野家にするか、王将にするか…」。
昼飯について考える。
歩くのが辛いため、なるべく近場で済ませたい。
しかし…だ。
よくよく考えてみると、昼飯どころの騒ぎではない。
そうだ。
昼飯よりも、右足の突き指を治すことの方が優先順位は高い。
会社の帰り、俺は家まで歩かなければならないのだ。

「飯なんか食わんでもええわ。ドラッグストアに行こう」。
右足を引きずって、俺は会社を出た。
徒歩5分ぐらいの場所に、大手ドラッグストアがある。
「あそこなら、劇的な効果をもたらす薬が置いてるはずやわ」。

痛みに耐えながら、なんとたどり着き、入店。
「突き指の薬はどこにあるんやろ?」。
店内をうろついたが、わからない。
この店に限ったことではないが、薬以外にも洗剤やら化粧品やらお菓子やら扱っている店は不親切だと思う。
「探すん面倒やわ」。
近くにいた男性店員に声を掛ける。
「あの、突き指の薬、どこにありますか?」。
すると、「突き指の薬?置いてませんね」。
「あぁ…」。
かなりの精神的ダメージ。

「ここまで歩いた苦労は何だったのか?」。
自問自答しながら、会社に戻る。
缶コーヒーを飲みながら、パソコンの画面を見詰めていると夕方になり、そして退勤。
また右足を引きずって家に帰る…わけだが、「そういえば…」。
少し遠回りになるが、もう1軒ドラッグストアがあることを思い出した。

痛みに耐え、のろのろとドラッグストアに向かい、「俺って根性あるよなぁ」と自己愛の塊になったところで、入店。
薬を探すのが面倒なので、入口近くにいた男性店員に声を掛ける。
「あの、突き指の薬、ありますか?」。
「突き指…ですか?」。
「はい」。
「今、突き指してるんですか?」。
「はい。まさに今、右足がですね…、腫れてるし痛いし…」。
「そうですか。う~ん、痛み止めの薬はあります。あと、腫れを抑える薬もあります。ただ、痛みを止めつつ腫れを抑える薬は無いですね」。
ショック。
「ここまで歩いた苦労は何だったのか?」。
自問自答する…と、「冷やしたらいいですよ」とアドバイスを頂いた。

冷やしたらいい。
確かに。
「いやぁ、これは一本取られたね」と、俺は膝を叩いた(心の中で)。
子供の頃、バレーボールを習っていた俺は、手の突き指で苦しみ、冷やして治した経験がある。
そうだ。
「手の突き指は冷やしたらいい」と理解しているが、足の突き指は初めてのため、「冷やす」を忘れていた。

盲点を突かれた気分で店を出る。
「帰ってから氷をビニール袋に入れて、足に巻き付けとけばすぐ治るなぁ」。
右足を引きずりながら、家に向かう…その途中、ふと思い出した。
「うち、氷なんかあれへんわ」。
ひとり暮らしを始めてから、俺の生活に「冷凍庫を使う」は無い。
食事はほぼ外食なので、冷凍食品を買うことが無いため、いつの間にか冷凍庫は開かずの間になった。
もちろん、氷など常備していない。

「氷、どうしょう…」。
「とりあえず、あそこやったら売ってるな…」。
右足を引きずりながら、俺はセブンイレブンに向かった。

つづく

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