(694)店員が非常識…ではなく、もしかして俺に存在感が無いのか-3

餃子をひとつ口に含み、ゆっくりと噛む。
「久々に食ったわぁ。やっぱり美味いよなぁ」。
馴染みのある味に、自然と気持ちが安らいだ。
「次は唐揚げや」。
一口食い、「え?いつもと違う。美味い」。
普段、セットに付いてくる唐揚げは冷めているが、この日は単品で注文したからか、揚げたてで熱々。
「別物やなぁ」と思いながら、ライスも口に含み、以後、餃子→唐揚げ→ライス…のローテーションを繰り返す。

「ちょっと休憩しよか」。
箸を置き、一息つきながら、何となく店内を見回す。
「知らん間に、客、俺1人になってもうたな」。
食べることに集中して気付かなかった。
「さっきまで、おばはん1人と1組の家族がおった思うんやけど」。
「まぁ、ええわ」。
後半戦スタート。
餃子→唐揚げ→ライス→餃子→唐揚げ→ライス…。

ローテーションに沿って、またまた餃子をタレに付ける。
そして、口に含もうとした時、「来月のシフト出した?」。
ホール係A(大学生ぐらいの女性)が口を開いた開いた。
「う~ん、来月は木曜も入りたいって思ってんねんけど」。
ホール係B(大学生ぐらいの女性)が返答。
ここから、ホール係A、Bの世間話が続く。
まぁ、俺以外に客はいないので、気を抜くのはわかる。
ただ、俺からすると、マイペースに食事を楽しみたいだけだなのに、何故こいつらのくだらない話を聞かされなければならないのか?
不愉快である。

「それにしても、こいつらアホなんか?」。
箸を止めて考える。
ホール係A、Bが暇潰しに世間話をするのはいいとして、何故、俺の目の前で…なのか?
店はそれなりに広い。
カウンター席は5つほどだが、4人掛けのテーブルが6つか7つ。
さらに座敷もある。
それだけ広いにも関わらず、何故、俺の目の前に立って世間話をするのか?

世間話は続く。
カウンター席に座る俺の正面には、衝立。
その先に、ホール係A&B。
俺と彼女たちの距離は70㎝ほどか。
何故、そこに立つ?
何故、そこで話す?
彼女たちの声のトーンは、徐々に上がった。

俺は「お客様は神様です」とは思わない。
現に、俺は神様ではない。
「お前ら、へこへこしろよ、アホンダラ!」というスタンスで飲食店を訪れることはない。
が、客に不愉快な思いをさせる店員には、「こいつ、何考えて生きてんねん…?」と思い、とても気持ちが悪い。
「まぁまぁ、こいつら学生なんやから大目に見ようや」と自分をなだめたが、感情として納得できないものもある。
何故、客である俺の目の前で、至近距離で世間話ができるのか?
普通に考えておかしくないか?
俺は透明人間、空気として扱われているのか?

餃子をゆっくりと噛みながら思い出す。
「去年も同じようなことがあったな…」と。
あれは梅田の焼肉屋。
カウンター席に座り、ひとり焼肉を満喫していた時だ。
厨房にオーダーを伝えに来たホール係C(大学生ぐらいの女性)が、何故か俺の目の前に突っ立った。
まぁ、それは特に気にすることもなく焼肉を食い進める。
と、店内のBGMが中山美穂か誰かの古い曲から、ZARDの曲に変わる(当然、これも古い)。

そこで、目の前のホール係CがZARDの曲を小声で歌い始めた。
俺からすると、「何でお前の歌声を聴かされなかあんなん?」だ。
「消えろ、ボケ」と思いながら、片面だけよく焼けた豚バラを引っくり返す。
そこで、更にホール係D(大学生ぐらいの女性)が登場。
DもZARDを口ずさみ。
そして、C&D、お互いに向き合って、首を横に振りながら歌い始めた。

「こいつら、アホなんか?」。
まずはそう思い、「何でお前らのちょっとした振り付け込みの歌を聴かされなあかんねん?」。
ムカムカした。
俺はただ焼肉を味わいたいだけだ。
何故、至近距離でわけのわからん奴らの歌(しかも振り付け込み)を聴かされなければならないのか?
見せられなければならないのか?

焼肉屋での回想シーンから、中華屋に戻る。
中華屋のホール係A&B、焼肉屋のホール係C&Dは、俺の感覚では明らかに非常識だ。
「若い」ということを差し引いても、非常識だと思う。
ただ、「ここまで非常識な奴も珍しい」。
そう考えると、「ちょっと待てよ。むしろ、俺に何か問題があるのでは?」という気もしてきた。
ひとり黙って豚バラを焼く。
ひとり黙って餃子を口に含む。
俺に何か問題があるか?

ABCDに対し、「最近の若い者は…」で処理するのは簡単だ。
しかし、俺も若い頃は「時代錯誤すぎるやろ?」とか「独善的すぎるやろ?」と思えるおっさん、おばはんから、「最近の若い者は…」と言われてきた。
同じようにはなりたくないので、「最近の若い者は…」を抜きに考えると、「やっぱり俺に原因があるんやろうなぁ」。
考える。
結論としては、「きっと、俺には存在感が無いんやろう」。

小学校の時分から、中学でも、高校でも、大学でも、社会人になってからも、学校なり会社に行って適当にアホなことを言っていると、いつも周りに人がいた。
「俺って、なかなかの存在感」。
そんなことを自覚せずとも人に囲まれていた記憶は、もしかして美化していただけかも知れない。

何かやりきれない思いで最後の餃子を噛み締め、俺は伝票を持ってレジの前に立った。
「ありがとーございます」。
ホール係Aの声。
「会計の時は、空気扱いしてくれてええねんで」と思う。

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