(754)元人妻と会う。

梅田のイタリアンレストラン。
ひとりテーブルに着き、スマートフォンを操作。
大して興味の無いニュースに目を通す。
と、「遅れてごめんね~」。
10分遅刻のTさん登場。
不思議なことに、彼女には何か余裕を感じる。
遅刻しないよう必死に走って来た俺の苦労は何だったのか?

「久し振りやんね」。
「そやなぁ。前に会ったんはいつやったかなぁ。みんなで飲んだ時以来やっけ?あれは、コロナ前やなぁ」。
テーブルを挟んで向かい合い、少し気を緩めたタイミングで、「コースの方、始めてもいいですか?」と女性店員。
「はい。とりあえず、自分はハイボールで(痛風が気になりビールは飲めない)」。
「じゃあ、私も」。

乾杯。
ハイボールをひとくち飲み、Tさんの顔を見る。
「あんな、俺、気になっててんけど、ここを予約してくれたんTさんやんかぁ」。
「うん」。
「後になって予約内容を確認したら、『13:00 女子会コース 2名様』になってんねんけど、俺、女子に見えるか?」。
「あ、大丈夫。男性もいけるらしいよ」。
「そうなんやぁ」。
ほっとしたと同時に、「紛らわしい名前のコースやなぁ」と思う。

目の前にはピザ。
夢中になって頬張りたい。
が、Tさんの存在を無視してはならない。
何か話を振らなければ。

「なぁ、今日は昼間から飲んでええ日なん?子供の世話はせんでいいん?」。
「うん、今日は大丈夫やで。たまたま時間ある日やねん。仕事も休みやし」。
「え?」。
確か、彼女は専業主婦のはず。
経営者の旦那さんと豊かな暮らしを送り、働く必要など無いような。
「え?今、仕事してんの?」。
「うん、してるよ」。
そして、「あ!」。
驚いたように、彼女は両手を口に当てた。
「言ってなかったっけ?」。

「『言ってなかった?』って、何を?」。
「あんな、私、離婚してん」。
「え!?」。
俺も驚いた。
「あんなぁ…」。
Tさんの話を簡単にまとめると、以下の通りだ。
コロナのせいで、旦那さんが経営する会社の業績は悪くなった…と。
そして、旦那さんは仕事のストレスを家族にぶちまけ、家庭がギクシャク。
「離婚しよう」。
彼女の方から、そう切り出したらしい。

「へぇ…。離婚してたんやぁ…」。
「うん」。
「やっぱり、決断するまで悩んだ?」。
「そうやねぇ。すぐに決めたよ。決めたらすぐに手続きして、あっさり終わったって感じかなぁ」。
「自分、なかなかの行動力やなぁ」。
「もう40過ぎてるからねぇ。別れた後、仕事することを考えたら、早めに決めなあかんやん」。
「40歳、過ぎてるから?」。
「うん。ひとつ歳を取る毎にな、雇ってもらいにくくなるもん」。
確かにそうだ。
仰る通りです…だ。
彼女は、もう40代。
早め早めの対応は、賢明だ。

「あら?ちょっと待てよ」。
我に返る。
感心している場合ではない。
Tさんは俺と同級生。
忘れていた。
「俺も40代やんけ!?」。
そうだ。
俺も40代。
40代のおっさん。
魔法少女ではないのだ。
ショック…。

「上の息子がなぁ、受験やねんけど、○○大学って知ってる?」。
「名前ぐらいは知ってる…って程度かなぁ。俺はアホな文系大学行ってたから、理系の○○大学のことはちょっと…」。
「そっかぁ」。
「あ、そういや、同級生のOっておったやん?あいつ、○○大学やわ」。
「そうなんやぁ。どんなとこに就職して、今は何してるか分かる?」。
「えっとなぁ、大手のゲームメーカーに就職したけど、すぐに辞めたらしいで。今は…、よく分からんど、何かの図面を書く仕事をしてるらしいわ」。

他愛もない話は続く。
Tさんの頬を見る限り、彼女は常にニコニコしているようだ。
が、俺は話しながらも、自分の年齢について考えていた。

自分が想像していた40代と現実の俺には、大きな開きがある。
至るところに。
このブログにしてもそうだ。
こんなアホさ全開のブログを書いているなど、想像もしていていなかった。

何か複雑な気分になり、俺は90分(女子会コース)を過ごした。

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