(755)コンビニで少し笑った話。

先日のこと。
突然、平日に休暇が取れ、「オッケーーー!!」。
俺は心の中で雄叫びを上げた。
世の人々が働いている中、俺は遊び呆けられる。
特権階級になった気分だ。

が、喜びも束の間。
冷静になって考えてみると、急に休みが取れたところで、予定など特に無い。
頭に浮かんだのは、掃除と洗濯ぐらいだ。

「参ったなぁ。何して暇を潰す?」。
普段通りの時間に起き、缶コーヒーを飲みながら脳内で語り掛ける。
もうひとりの自分に。
「そやなぁ。まぁ、とりあえず掃除と洗濯を片付けてまおうや」。

家事を終え、また考える。
「もうやること無くなってもうたで。何して暇を潰す?」。
「とりあえず、走りに行こかぁ」。
カスクを被り、近所のサイクリングロードへ向かう俺。

武庫川サイクリングロード。
日頃から走っているせいだろう。
川沿いの景色に見惚れることなどない。
俺は前を見て、黙々と脚を回す。
が、頭は暇。
とっても暇。
何か考えよう…というわけで、「帰ってから何を食おうか?」を考えた。

王将で餃子にビール。
いいねぇ。
蕎麦屋でゆっくりと酒を飲み、ささっと蕎麦を平らげる。
いいねぇ。
トルコ料理屋でケバブ。
いいねぇ。

選択肢は広がる。
ただ、「ちょっと違うねんなぁ」。
何となくだが、外食する気分にはなれない。
帰ってから風呂に入り、着替えて家を出て…が面倒くさく思えた。
「コンビニに寄って、酒と飯を買って帰ろうか」。
「うん、家で酒飲みながら引きこもろう」。

サイクリングロードを往復し、家の近くのコンビニへ。
ロードバイクをバリカーに立て掛け、OTTO LOCKを巻き付ける。
「そやそや」。
念のため、サイコンを外しておこうと手を伸ばす。
と、時刻表示が目に入った。
「12:00」。

「うっわ。よりによって、一番混んでる時間に来てもうたなぁ…」。
「買い物すんのに、並ばなあかんのか…」。
ガラスのドアより少し離れた位置から店内を覗く。
「う~ん、それなりに混んでるみたいやなぁ」。
気は進まないが、「まぁ、ええか」。
入店。

(↑ここまでは前置き。↓から本題に移るが、爆笑を期待しないで読んでほしい。いつも通り、大した話ではない)。

入口でカゴを取り、売場へ。
小さなペットボトルの芋焼酎と幕の内弁当、PRINGLESを入れ、レジに進もうとした…が、「めっちゃ並んでるやんけ…」。
もうね、俺はね、並んでまで買い物をしたくないの。
ほんま、困りますわ…。

レジは2台。
それぞれのレジには、忙しそうなふたりの女性店員。
また、それぞれのレジには列が並び、俺もそのひとつに並んだ。
前方に目を向ける。
「1、2、3、4…。俺は5番目か」。
「鬱陶しいけど、まぁ、我慢しよかぁ」。

店員さんはテキパキと客を捌き、俺はレジに向けて1歩進み、2歩進んだ…が、流れは急に止まった。
「あら?」。
「何や?」。
「多分やけど、今、接客中のお客さん、宅急便か何かで時間が掛かってるんやろなぁ」。
「まぁ、そんなとこやろなぁ」。
ジャージのバックポケットからスマートフォンを取り出し、どうでもいいニュースに目を通しながら、自分の番を待つ。

たまにスマホの時計を確認し、「おいおい、3分経ったで。まださっきのお客さんで止まってるんか?」。
イライラ。
隣のレジに並ぶ列はスムーズに流れているようだが、俺が並ぶ列は微動だにしない。
「まだ宅急便の処理してんのか?」。
「勘弁してくれよ」。
イライラ。
イライラ。

「さっきから列の流れを止めてる客は誰や?」。
前に並ぶ客の肩越しにレジを見る。
と、小さな子供を抱えた女性の後ろ姿。
「さっきの宅急便の客か」。

「早く処理してくれよ」と怒りを込めながら、店員に目を向ける。
「あ…」。
レジの向こうで、ポンポンポン…と用紙に判子を押す店員を見て、理解できた。
「あ、宅急便ちゃうわ。これ、公共料金支払いの対応やわ」。

我々を待たせる、子供を抱えた女性客は、公共料金の支払いをしている。
分かった。
状況は分かった。
よく分かった。
ただ、何故、時間が掛かるのか?
不思議だ。
俺が把握しているだけでも3分。
把握する前も含めると、5分以上掛かっているだろう。
何故だ?
公共料金の支払いぐらいで、何故、そんなに時間が掛かるのか?
俺は興味を覚え、女性客を観察した。

1分経過。
「なるほど」。
「そういうことか」。
女性客は、複数枚(大量?)の公共料金請求書を持っている。
それらを別々に精算したい。
1枚ずつ店員に提示し、バーコードをスキャンしてもらい、セミセルフレジのパネルに表示された金額を確認。
その金額の現金を投入口に入れたい。
が、子供を抱き抱えているため、財布から現金を出し、お釣りを財布に戻す作業が難しい。
片手では困難だ。
で、何とか精算したところで、また次の請求書を…を何回も何回も繰り返すため、時間が掛かって仕方が無い。

待たされるのは嫌だが、「子供抱えてるもんなぁ。これは責められへんよなぁ」と思う。
諦めて待つしかない。
俺は悟った。
が、「チッ…」。
背後で舌打ち。
「チッ!」。
振り返ると、作業服を着たおっちゃん。
小刻みに震えながら、レジを凝視している。
「チッ!」。

おっちゃんの気持ちは分かる。
アホほど待たされて、イライラする気持ちは分かる。
「でもな、ここは我慢しようぜ」。
そう彼の心に語り掛けたところ(口には出していない)、小刻みな震えが激しくなり、「はよせい!」。
怒号が店内に響いた。

「ええ加減にせえよ!いつまで待たすねん!?」。
レジを睨んだまま、おっちゃん、ぶちギレ。
「さっさとせえ!はよせい!」。
叫びたい気持ちは分かる。
「でもな、ここは我慢しようぜ」。
もう一度、俺は彼の心に語り掛けた(口には出していない)。

またレジに目を向けると、女性客は次の請求書を店員に提示。
そして、しばらくしてから振り返り、おそらくだが、「さっきの『はよせい!』は私に対して?」。
気付いたのだろう。
その精算を最後に、彼女は店を出た。

列が流れ始める。
ひとつ前の客は一瞬で買い物を終え、やっと俺の番が回ってきた。
レジに進み、カゴを置く。
「お弁当、温めますか?」。
「はい、お願いします」。

この時、ふと思った。
もし、俺が店員に「最近の阪神はダメですねぇ」や「最近、急に寒くなりましたねぇ」などと世間話を振った場合、後ろでイライラしながら待つおっちゃんは、どれだけ怒り狂うだろうか?
興味が湧く。
「はよせい!殺すぞ!」ぐらい言われるのだろうか?

興味は湧いたが、「人をキレさすのに、敢えて時間稼ぎするんも幼稚やな」。
自分を戒める。
さて、俺は弁当が温まるのを待つため、レジの横へ移動。
次はおっちゃんだ。
ついに彼の番が回ってきた。
イライラし、そして叫び、やっと回ってきたのだ。

俺はレジの横からおっちゃんを見詰める。
と、「バシッ!」。
彼は100円ライターをひとつ、レジに置いた。
買い物はたったそれだけ。
「うっわ。100円ライター買うだけであんなに待たされたら、そら、やってられへんよなぁ」。
同情すると共に、笑いが込み上げてきた。

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