(861)負の連鎖~ロードバイクに乗れない3日目-2~

3日目その2

風邪薬を飲むため、薬箱を取りに行こうと立ち上がった瞬間、左足首に信じられない痛みが。
あまりの激痛に失神しそうになった。

ぷすぷす…ぷすぷす…。
頭から湯気を立て、布団の上で四つん這いになる俺。
「ほんま、死ぬかと思ったわ…」
「一体、何事やねん…?」

思い当たる節は、ひとつしかない。
昨日の夜だ。
仕事を終えて事務所から出た後、充血した左目のせいで前が見にくく、更に電気の消えた薄暗い中、俺はビルの階段を踏み外した。
その際、左足首に違和感を覚えたが、まさかこんなことになるとは。

「風邪引いた上に、歩かれへんようになったんか…」
左足首に手を添えると、気のせいだろうか。
とんでもない熱を持っているような。
また、腫れがひどく、まるで丸太のようだ。

さて、自分を襲った悲惨な状況を理解した上で、考えなければならない。
どうする?
まずは、ちゃぶ台の上にある目薬に手を伸ばし、そして左目に差す。
OK。
完了。
次に、押入れの前に無造作に置かれた薬箱。
薬箱から、風邪薬と足首に貼るロキソニンSを取り出したい。
あと、トイレに行きたい。
が、俺は歩けない。
どうする?
四つん這いで進むしかない。

「あぁ…」
布団の上で横になり、頭を抱える。
薬箱にロキソニンSはあった。
それはいい。
それはそれでいい。
左足首に貼り、後は腫れと痛みが引くのを待つのみ。
ただ、予想に反して風邪薬は無かった。

「参ったなぁ。風邪薬を買いに、近所のドラッグストアに行こかぁ」と思うが、ダメだ。
今の俺は歩けない。
四つん這いで、外をうろつけない。
ならば、「車力の巨人を意識して、何か装備を施したら格好ええかもなぁ」とも思ったが、ダメだ。
通報される。

結局、歩けるようになるまで、俺は家から出られない。
風邪薬も飲めない。
布団の上でゴロゴロし、せっかくの休日を潰すのか。
くだらない。
本当にくだらない。

いや、ちょっと待て。
悲観的になっても仕方が無い。
現実は何も変わらない。
今の自分、動けない自分に、何かできることはないか考えよう。
そうだ。
まずは、体にいいものを食べよう。
風邪薬は飲めなくても、食べることで回復を早めたい。

が、食欲が無い。
まったく無い。
「参ったな」と、スマートフォンのアルバムを起動。
先日食った、天下一品のこってりラーメンの写真を見てシミュレーション。

まず、レンゲでスープをすすり、「うん、これがいつもの天一の味や」。
ひとり頷く。
次に、リフト。
しかし、麺を口には含まない。
待て。
焦るな。
いいか?
麺をスープの上に置いて、辛味噌を麺に直接乗せる。
スープは汚さず、辛味噌と麺の味を口の中で楽しむのだ。
以上を数回繰り返し、満を期してラーメンだれを投入。
そして…。

と、想像するだけで、普段なら食欲が刺激されるが、この日は違った。
食に興味が湧かない。
食欲か湧かない。
「天一のラーメンでグッとくるもんがないとは、俺はあかんわ…」
「生ける屍やわ…」
「はぁ…」
自分に絶望し、目を閉じると、いつの間にか眠りに落ちた。

つづく

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