(864)負の連鎖~ロードバイクに乗った5日目-1~

5日目その1

「まぁ、平熱…ってとこやな」
体温計をちゃぶ台に置き、立ち上がる。
「ぐっ…」
相変わらず左足が痛い。
かなり痛い。
「さて…と。出勤前に風呂入ろ」
四つん這いで浴室へ進む俺。

湯船に浸かり、天井を見上げながら考える。
「やっぱり、会社、行かなあかんよなぁ…」
「今日、会社、行かなあかんよなぁ…」
「でも、この左足ではなぁ…」
「あぁ…」
参った。
徒歩で通勤するのは無理だ。
多分、途中で死ぬ。
電車通勤も気が進まない。
最寄り駅まで歩く自信が無い。
「ここはひとつ、ロードバイクに乗って行こかぁ」

ロード通勤の場合、左足へのダメージは少ないだろう。
右足一本でクランクを回せばいい。
ただ、問題がある。
それは、階段だ。
ロードを担いで、うちのマンションの階段を降り、ロードを担いで会社が入るビルの階段を上らなければならない。
今の俺は、何も担いでいなくても階段は苦痛なのに、ロードを担いで…は拷問でっせ。

ただ、会社までの距離を考えると、ロード通勤こそ最もダメージが少ないと思う。
そうだ。
階段のみ我慢すればいい。
「乗って行こかぁ」

出勤の準備を終え、マンションの階段の前で呼吸を整える。
「勘弁してほしいわ…」
「俺、ロードを担いで、この階段を降りなあかんねんなぁ…」
「もがき苦しむん、目に見えてるのになぁ…」
「あぁ…」
現実と向き合いたくない。
しかし、俺は出社しなければならない。

考える。
俺の仕事など、日本経済にも世界経済にも何の影響も無い。
公園の隅で、蟻が餌を運んでいるようなものだ。
大局的に見て、価値が乏しい。
ただ、「やっぱり行かなあかんよなぁ。会社に…」。

「どんな小さな労働にも、そこには価値がある」と自分に言い聞かせ、気合いを入れる。
まぁ、最高潮…までは無理だったが、とにかく行こう。
「次鋒 レオパルドン いきます!!」
「グオゴゴゴ」

マンションの前でもがき苦しむ俺。
至急、布団の上に寝転がり、自分を労りたい。
会社など、もうどうでもいい。
もともと仕事する気0だったが、一気に-500まで落ちた。
嫌だ。
もう嫌だ。
会社に行きたくない。
本気で、外に出たくない。
部屋でゴロゴロし、左足の激痛から解放されたい。
しかし…だ。
部屋に戻るには、死にかけながら降りてきたマンションの階段を上がらなければならない。
無理…。

仕方無くサドルに跨がる。
「行くしかないかぁ…」
右足一本でクランクを回し、俺は会社へと向かった。

つづく

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