(929)三重県から来たロード乗りの客人~Bianchiの人~

阪神尼崎駅近くのビジネスホテル。
エントランスの前でぼんやり突っ立っていると、ドアが開き、眼鏡の男性が顔を出した。
「あ、Sさん(三重県在住 40代 男性)か?」
彼とは1年半か2年ほど会っていない上、俺は人の顔を覚えるのが苦手。
「もしかして、他人かも知れんけど…」と思いつつ、声を掛ける。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です」
どうやら、俺は賭けに勝ったようだ…が、まだ不安。

「三重から車でこちらまで、時間も掛かったやろし、随分と疲れたでしょ?」
「えぇ、えぇ、ずっと下道を×××でえぇ、それで、まぁ、早目に出た×××かな、×××やな。ふふふ」
思い出した。
Sさんは、会話しているのか独り言を言っているのか分かりにくい喋り方をする。
「あ、間違い無いわ。間違い無く、Sさんやわ」
俺は胸を撫で下ろした。
ちなみに、会話の中で、7割ぐらい聞き取りにくいこともあるが、そんな時は「はい、そうですね」と返しておけば問題無い。
とりあえず。

開店前のスナック、雀荘、おそらく朝から開いてるであろう飲み屋、パチンコ屋。
阪神尼崎の街並みをぶらぶら歩き、目的の店へ向かう。
「あの、Sさんは好き嫌いあります?あと、辛いものは苦手とか」
「えぇ、まぁ、好き嫌いは無いですし、辛い×××は×××で、ふふふ。大丈夫ですよ」
「今から行く店は、てっちゃん鍋の店なんですわ。予約してへんけど」
「えぇ」
「んで、辛いものが苦手な俺でも、余裕で味わえる店なんで、大丈夫そうですね」
「えぇ、まぁ、×××やから大丈夫と×××ますよ。自分は、×××で×××、×××かな。えぇ」
「はい、そうですね」

俺が案内する店は、「やすもり」。
随分と前の話。
通勤ルートにこの店があり、前を通るたびに気になった。
「仕事帰りに寄ってみいひんか?」。
同僚を誘って入ったところ、「めちゃめちゃ美味いやんけ!」。
以来、ファンになった。
まぁ、尼崎で飲む機会が少ないため、訪れるのは年に1回ペースだが。

入店。
旅行中のSさんは気楽に酒を飲めるが、俺は違う。
この後、会社に戻ってちょっとした作業を処理しなければならない。
「う~ん、焼酎とかウイスキーはやめて、酎ハイにしとこか」
生ビールと酎ハイで乾杯。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です」

酎ハイを喉に流しこんでいると、隣に座るSさんが鞄をまさぐり、「実はですねぇ、ええ。前にお渡ししようと思ってたものが×××でねぇ。×××で」
俺は、ビニール袋を手渡された。
「はい?」
プレゼントだろうか?
「かなり前に×××でkrmさんに渡そうと思ってたんですけど、えぇ。前は忘れてましてねぇ」
「はい」
ビニール袋の中を確認すると、黒いTシャツ。
Bianchiのエンブレムが、ちらっと見える。

なるほど。
俺がBianchiのロードバイクに乗っているため、UNIQLOのTシャツ(Bianchi)を買ってくれたのか。
なるほど。
思い返すと、前にも同じことがあった。
まぁ、率直に言って嬉しい。
ただ、Bianchiのロードには乗っているが、私服までBianchiにこだわっているわけではない。
そこまで「Bianchi大好きな人」でもない。

「今日のネクタイは黒で、スーツはチェレステ。うん、今日は黒チェレで決めたったで!」
「今日は白のジーンズに、チェレステのシャツ。うん、白チェレステや!」
Sさんも、前にプレゼントをくれた人も、俺をそういう人間だと思っているのか?

まぁ、いい。
それはいい。
そんなことよりも…だ。
「プレゼントは良くないよなぁ」と思う。
良くない。
本当に良くない。
ダメだ。
何も、「物品のやりとりが人間関係を狂わせる」。
そう主張したいわけではない。
俺が主張したいのは、「こっちも何か返さなあかんようになるやんけ!」だ。
面倒臭い。
面倒臭すぎる。
だから、「物品のやりとりはしない」と決める必要がある。
けじめをつけるのだ。
「ちゃんと線引きしなあかんやろ!」
心の中でSさんを叱りつつも、さささっ…。
Tシャツを、自分のバッグに詰め込む俺。

つづく

書いてて思います。
「今回も長い話になるよなぁ」と。
まぁ、飽きずに読んでね。
押してね。
↓↓↓↓↓

にほんブログ村 自転車ブログ ロードバイクへ
にほんブログ村

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする