(947)三重県から来たロード乗りの客人~微かな期待~

コンビニに入店し、電池の売場へと向かう。
「で、どれや?」
「見た感じ、全部一緒に見えるよなぁ」
「あ、これやわ。パッケージに『CR2032』って書いてるわぁ」
さっと買い物を終え、店の近くでぼんやり佇むSさん(三重県在住 40代 男性)に、「お待たせしました」。

さて、電池をセンサーに入れれば、サイコンがまともに動作する…わけだが、困った。
「う~ん」
「くっそ…」
パッケージが硬すぎて、電池を取り出せない。
捻ったり裂こうとしたり…と、俺なりに努力もしたし工夫もした。
でも、無理。
「まぁ、そうやわなぁ…」
「やっぱり無理やわなぁ…」
「パッケージに、『ハサミで開封』って書いてんもんなぁ…」

参った。
サドルバッグに六角レンチは入っているが、ハサミは無い。
そもそも、ライドの際にハサミを携帯する習慣が無い。
参った。
参った。
電池が手元にあるのに…だ。
センサーが作動しない現実に、やりきれない気持ちになる。
参った。
本当に参った。

と、Sさんが口を開く。
「krmさん、えぇ、どうかしましたか?ふふふ」
「はい。電池をね、取り出したいんですけど、パッケージを開けるにはハサミが必要で…。でも、そんなもん、持ってないですよ。まぁ、力業で挑んでみたけど、ダメでした…」
「えぇ、そうですか。えぇ」
参った。
本当に、どうしょうもない。

と、またSさんが話し掛けてきた。
「えぇ、ちょっと貸してくれますか?」
「はい、お願いします」
電池の入ったパッケージを手渡す際、「もしかして、この人ならやってくれるかも」。
俺は、微かに期待を抱いた。

見た感じ、Sさんはスラッとした体型。
パワーファイターには見えない。
が、人は見掛けに依らない。
ゴツくない人ほど、実は怪力なのだ(大した根拠は無いが)。
そうだ。
そうなのだ。
微かな期待が大きく膨らみ、「この人は間違い無くやってくれる」。
俺は確信した。

両手でパッケージを掴み、捻り、そして裂く動作をするSさん。
「頼むで…」
祈る思いで彼を見詰める俺。
「ほんま、頼むで…」
無理だった。

あきらめるしかない。
相変わらず、サイコンの表示は「– – km/h」だが、もういい。
どうせ、大した速度など出せないのだ。
「Sさん、行きましょ」
「えぇ、はい。でも、コンビニでハサミを借りてみたらいいんじゃないですか?えぇ」
「いえ、もういいんです。行きましょ」

西宮浜から南芦屋浜に向け、クランクを回す。
そして、回しながら考える。
「Sさんの提案、ハサミを貸してくれ…は、ちょっと言いにくいよなぁ」と。
学生時代、コンビニでバイトしていた俺からすると、「だったら買えよ。ここは店やぞ」。
そう思ってしまう。
もし、荷物を持って来た客から、「宅急便の伝票を書くからペンを貸して」と言われれば、「はい、どうぞ」。
何の抵抗も無くペンを貸すが、ハサミは少し違う気がする。
何だろう?
ペンとハサミの境界線はどこだろう?
どこまではセーフでどこからがアウトなのか?
「う~ん」
考える。
「う~ん」
考えた末、辿り着いた結論は、「そんなもん、どうでもええわ」。

つづく

毎日毎日、本当に暑いですが、自分は寒い記事を書いています。
ま、これからも読んでね。
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