(1000)母の病気-1

洗濯物をベランダに干した後、一仕事終えた気分となり、布団の上に横たわる。
「居心地ええけど、このままゴロゴロしてたら休日が終わってまうなぁ。勿体無いよなぁ」
頭では分かっている。
ただ、体がだらけきっている。
「ほんまにこれでええんか?洗濯して寝るだけ…でええんか?」
「激務と向き合って、やっと獲得した休日やぞ」
「無理にでも、有意義な休日を過ごす努力をしようや」
自分を鼓舞し、俺は立ち上がった。
えらい!

武庫川サイクリングロード。
家を出て、川沿いの道を往復した後、帰宅するまで約1時間。
それなりに体を動かした気分になれるサイクリングロード。
脚を回しながら、「運動してる自分、大好き」。
自己愛に満たされていると、背中に振動。
ジャージのバックポケットに突っ込んだ、スマートフォンのバイブだろう。

「なんて可哀想な俺…」
おそらく、電話の主は取引先。
緊急対応を依頼されるのが、目に見えている。
休日にも関わらず…だ。
「ほんま、勘弁して下さいよ」
道を逸れ、芝生の上で脚を止めた。

「ブーン…ブーン…」
背中に手を回し、スマホの画面を確認する。
「許して…」
画面に表示された文字は、「母親」。
参った。
取引先より都合が悪い。
俺は出来損ないの一人息子だ。
いつも通り、小言を言われるのだろう。

「はい、もしもし」
心臓が握り潰されそうな感覚に陥りながらも、電話に出る。
「お母さんやけど、あんたなぁ」
これからどんな話が展開されるのか予想もできず、ただただ萎縮する俺。
「あんたなぁ、まだマイナンバーカードを作ってへんやろ?早く作りや」
正直、「その程度の話か」と思い、「百枚でも千枚でも作りますよ」と言いそうになった。
「うん、分かったわ。マイナンバーカード、さっさと作るわ 完」
電話を切ろうとしたところ、「もうひとつ話があるねん」と。

「面倒くさい話は、勘弁して下さいよ…」
そう思い、半泣きになって母の話を聞く。
「あんな、お母さん、胃がんやねん」
「え?」
「具合が悪くて○○病院に行ったんやけど、今度、□□病院に精密検査を受けに行くことになって。□□病院、知ってるやろ?」
「あぁ、そら、知ってるよ。あの大きい病院のこと」
「だから、お母さん、癌やから。そういうことやから」

母はもう70過ぎ。
もしものことがあってもおかしくは無い年齢。
また、癌が死亡原因としてポピュラーであることを、俺は知っている。
ただ、信じられない。
自分の母が癌を患い、おそらく、そう遠くないうちにいなくなる。
そんな現実を受け入れることができない。

走る気分にはなれず、芝生の上でただ立ち尽くす。
「俺、どうしたらええんやろ?」
考えたところで、どうすることもできない。

つづく

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