(1018)酒肴・豊川(仮名)-1

肌寒くなったせいか、クランクを回しても汗を掻かない。
まぁ、暑いのも汗でびしょびしょになるのも嫌いだが、「一滴の汗も流れへんのは寂しいな」。
そう感じる。
どうも、体を動かした気分にならない。

少しでも汗を掻こうと、インナーで走る。
シャカシャカ…シャカシャカ…。
限界まで脚を回す。
が、鼻炎のせいだ。
呼吸困難になり、サドルの上でぐったり。

「あぁ、しんど」
頭をうなだれる、
「風向きも悪いし、ただ辛いだけの作業をこなしてるみたいやわ…」
脳内で文句を言った後、目線を前に向ける。
キラキラ、キラキラ。
日差しに当たるユスリカの羽。
一瞬、「綺麗やなぁ」と思ったが、ダメだ。
次の瞬間、俺は蚊柱に頭を突っ込まなくてはならない。
最低だ。

顔や髪や体のどこかに、ユスリカが張り付いているかも知れない。
気持ちが悪い。
家に帰って風呂に入り、体中を丹念に洗う。
「OK。すっきりしたところで、飲みに行こかぁ」

隣町の焼鳥屋。
カウンターの隅で、瓶ビールをちびちびと飲む。
考えることと言えば、仕事のスケジュール。
「6日には○○を納品して、10日には××の件で打ち合わせ、13日までに対応して、15日にレビューかぁ」
「まぁ、レビューで何も指摘されへんやろから、16日は休めるなぁ」
地鶏を噛みながら、「『豊川』に顔を出すんは16日にしよかぁ」。

「酒肴・豊川」とは、大阪の小料理屋。
小中学校の同級生Tさん(40代 女性)が大阪で経営している。
3ヶ月ほど前だったか、「私な、お店始めてん」とメールがあり、「お!前から『小料理屋したい』って言うてたけど、ほんまに始めたんか!」。
その行動力に感心した。
続けて、「でもなぁ、めっちゃ暇で。1回な、うちに来てくれへん?早く来てくれんと潰れてしまうわ」と。

「うん。都合のええ日があったら連絡するから」
そう返事したものの、以後、放置。
一応、気にはなっていたが、結局のところ放置。
ダメだ。
近頃、「俺は人間としてどうなのか?」と思い始めてきた。

「Tさん、16日にそっち行くわ」
「ありがとー。待ってる!」
「で、店の場所とか営業時間とか分かれへんのやけど(マイナーすぎてネット情報が無かった)」
「うん、お店の名刺、メールで送るねー」

名刺の裏面に記された地図を確認。
「うっわ…」
大阪市内ではあるが、中心部から外れており、「うちからやと乗り換えなあかんし、ちょっと時間が掛かるなぁ」。
急に気だるさを感じた。
ただ、「やっぱり行くのやめときます」とメールする度胸も無い。

「余計なことに首を突っ込んでもうたかも…」
やや後悔する日々を送り、16日を迎えた。

つづく

にほんブログ村 自転車ブログ ロードバイクへ
にほんブログ村

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする