(1027)街角に潜む悪魔-1

目薬を差し、ティッシュで目の周りを拭いた後、またパソコンの画面に目を戻す。
パチパチパチ…と入力しては考え込み、「この作業、納期までに終わるんやろか…?」
不安で不安で仕方無い。
ただ、今の俺は、作業と向き合い進めるしかない。

朝の8時過ぎに出社し、そのまま徹夜。
昼過ぎに出社し、翌日の夕方までキーボードを叩く。
夕方に出社し、途中、仮眠を取って2泊3日。
そんな辛い日々を過ごした、ある日のこと。

ソファーで仮眠した後、「そろそろ帰ろかぁ」。
事務所の隅に立て掛けたロードバイクを担ぎ、ビルの階段を降りた。
「もう、時間の感覚が無くなってきたわぁ」
辺りは薄暗い。

目を擦りながらクランクを回す。
「帰ってから飲みに行こ!」といった気力など湧かない。
「コンビニに寄って、酒とシーチキンでも買って帰ろかぁ」という気にもならない。
しかし、何も食わない…のも体に良くない。

「あ、缶のコーンスープ、買って帰ろか」
裏通りに入り、「確か、あそこの自販機に売ってたような」。
記憶を辿りつつ、脚を回す。
「ここや、ここや」
トップチューブに跨がった状態で自販機を凝視。
無かった。

「まぁ、ええか…」
サドルに乗って走り出す。
ゆっくり、ゆっくり。
と、10mほど先に、クロスバイクに乗った兄ちゃん。
こちらに向かって走ってくる。
そして、背負っているリュックから、何か白いものが落ちた。
タオルなのか手袋なのかは分からない。
分からないが、すれ違いざまに、「あの、何か落としたよ」。
一応、声を掛けておいた。

さて、その数日後。
「今日は昼から出勤かぁ」
午前中、布団の中でダラダラした後、風呂に入って家を出た。
クランクを回しながら考えることは、1日のスケジュール。
「16時には○○の作業を終わらせて、17時には報告して、20時には××の作業を終わらせて、それから△△の対応を始めて…」
「うわぁ、今日中に帰れるんやろか…?」
働く前から気が滅入る。
やがて、走る気力も低下し、「遅刻はせんやろから、ゆっくり行こかぁ」。
歩道に上がり、ママチャリに抜かれるスピードで進む俺。

交差点。
「16時には○○の作業を終わらせて、17時には報告して、20時には××の作業を終わらせて…」
信号待ちの間、脳内で1日のスケジュールを復唱していると、真横にクロスバイクが止まり、「こんにちは!」。
急に挨拶され、心臓が飛び出しそうになった。

「誰…?」
目線を横に向けながら考える。
「もしかして、この前の兄ちゃんか?落とし物をした兄ちゃん」
「『あの時はどうも』とか、礼を言いたいんやろか?」

声の主の顔を見る。
「え…?」
「誰…?」
「このおっちゃん、誰…?」
凍り付いていると、「これこれ、3万!これ、3万!」。
知らないおっちゃんが、笑顔で何かを訴えている。
「これ、3万!」
俺は凍り付いたまま。
「最悪や…。面倒くさいことにならんかったらええんやけど…」

つづく

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