(253)さいたまクリテリウムを含む、最高の関東旅行。~出発~

10月26日から27日にかけての夜、俺はなかなか寝付けなかった。
27日の朝から、電車に乗って埼玉に行き、「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」を観戦するのだ。
世界的に有名なプロロード選手の走りを、生で観ることができるのだから、想像しただけで胸がいっぱいになる。
寝てる場合ではない。
だが、寝ておかなくては疲れるので、目を閉じるよう心掛ける。
やっと睡眠。
目を覚まし、「まだ外は暗いな。まぁ、少しでも眠れてよかったわぁ」と思い、スマートフォンの時計を見ると、30分しか経っていなかった。

「寝るのは、新幹線の中でええわ」。
開き直って、起きることにした。
出発するまでの間、布団の中で無駄に過ごすのも嫌なので、寝る用のジャージから走る用のジャージに着替え、俺はジョギングに出た。
「行き帰りの新幹線の中で、また、関東でうまい物を食うだろう。太って帰って来るのは嫌なので、僅かながらの太らない抵抗を試みよう」。
そんな意味もあって。
真夜中のジョギングが、余計に俺を刺激したのか、テンションは上がりっぱなし。
「今の俺が…、EXAMシステムが発動された俺が…、持ち帰った仕事に向き合ったら、めちゃめちゃ効率ええんちゃうか?」。
そう思い、ノートパソコンを開けた。

カーテンの隙間から、日が漏れている。
ということには、なんとなく気付いていた。
ただ、「まだ6時か7時ぐらいやろう」と思い、仕事を進めていたが、ふと画面の端に目をやると、「9時やんけ!?」。
1泊分の靴下と下着、スマートフォンの充電器などを適当にショルダーバッグに放り込み、リラックス用のジャージを脱いで風呂に入り、お洒落用のジャージに着替えて俺は家を出た。
最寄り駅までは、走らない。
「焦らなくてもいい」と、自分に言い聞かせながら、ゆっくり歩く。

家から埼玉まで、約4時間見積もっておけばいい。
それに、俺が観戦したいクリテリウムレースは、15時ぐらいにスタートだ。
「まだ、10時前や。1時間、余裕がある」。
本来なら、埼玉に行くため、まず新大阪に向かって新幹線に乗らないといけないのだが、俺は難波行きの電車に乗った。
12月1日の伊勢志摩サイクリングフェスティバルのサイクルトレインとホテルを予約するために。

実は、前日(26日)の夕方、俺のチーム全員分(おっさん3人分)の予約と決済をしに、近鉄難波営業所に行ったのだが、営業時間が終わっていたため、「俺は何をしに来たんだ?」と自問自答しながら、とぼとぼと帰った。
しかし、チーム全員から、「イベントの前日と当日に休みを取った」と言われたからには、絶対に予約を済ませなくてはならない。

再度、近鉄難波営業所に足を運んだ俺。
前の客が、長々と旅の手続きをしているのを待ちながら、スマホの時計に目をやると、「埼玉に着く時間が、想定より遅くなる…」。
やばい。
焦る気持ちを抑えようと、俺は苦労する。
そして、やっと俺の番になった。
「伊勢志摩サイクリングフェスティバルに参加するので、サイクルトレインとホテルの予約に伺いました」。
近鉄の担当者と机を挟んで向き合う。
「この人、なんとなく立花孝志氏(N国)に似てるなぁ」と、俺は思った。

「どちらの駅からサイクルトレインに乗りますか?」と立花氏。
サイクルトレインが停車するのは、近鉄沿線の中でも限られた駅だけ。
その中で、俺のチームが行き帰りで利用するにあたって都合の良い駅は…。
「上本町でお願いします」。
「では、宿泊するホテルはどうされますか?」。
指定された3つのホテルから選ぶ。
のだが、一番安いのでいい。
「このホテルでお願いします」。
「では、こちらのご記入をお願いします」と、立花氏が申込書を俺の前に置いた。
困った…。
チームのメンバーの氏名。
「氏」はわかるが、「名」は知らない。
住所?
最寄り駅はわかるが、正確な住所など知らない。
興味すら無い。
生年月日?
死ぬほどどうでもよすぎて、聞いたことも無いし、今まで知りたいと思ったことも無かった。
結局、申込書に記載されたほとんどの欄を埋めることが出来ず、俺は「出直してきます」と言い、スカスカの申込書をショルダーバッグに入れて、近鉄難波営業所を後にする。

地下鉄御堂筋線に乗って、新大阪に向かった。
俺は、扉にもたれ、「あぁ、サイクルトレインの予約、今日も一歩も前進しなかった…」と悲観的な感情に浸る。
と、すぐ新大阪に到着。
新幹線を利用した、さいたま新都心までの切符を買い、駅弁を求めて売場を物色した。
「お、これや。こういうのでええんや」。
胡麻を振りかけたおにぎりと、めざし、たくあんが入ったシンプルな弁当(値段も400円ちょいで魅力的)と缶ビールを買い、新幹線に駆け込む。

本当は、空腹ではなかった。
ビールを飲みたい気分でもなかった。
ただ、旅行気分を味わうために、弁当とビールを買ったのだ。
「口が子供」と言われる俺にとって、めざしの苦さには難儀したが、かじりながらビールを飲んでいるうちに、「これはいける」と思った。

新幹線は京都を過ぎ、名古屋へ走る。
その途中で、俺は眠りに入った。
目を覚ますと、新横浜。
やっと関東に来た。
ここで初めて、ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムの観戦を、現実として認識した。

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