(259)さいたまクリテリウムを含む、最高の関東旅行。~鎌倉からり~

「よっ、ご無沙汰したね」と、俺は暖簾をくぐる…。
勝手にそんなシミュレーションまでしたのに、奈可川さんは休み。

「他で食おう。天ぷらを食おう」。
久しぶりの鎌倉だ。
俺が行きたいお寺は決まっているので、その方面に向かってぶらぶら歩き、良さそうな店があれば入ろう。

鶴岡八幡宮の前の道に出た。
狭い歩道を、多くの観光客がぞろぞろ歩いてる。
俺もそこを少し歩くと、天ぷら屋があった。
外から店内をのぞいてみる。
ぎゅうぎゅう詰めではない程度に混んでいたが、「カウンター席、空いてるな。ちょうどええわ」。
一応、店の前に立てられたメニューに目を通し、入店。

天ぷらを食いたい。
でも、せっかく関東に来たのだから、蕎麦も食いたい。
そんな俺の願いを叶えてくれるメニュー、「天丼+ミニ蕎麦」があったので、店員の大学生ぐらいのお姉さんを呼んで注文。
「お蕎麦は、かけとざるがありますが、どうされますか?」。
迷う必要など無い。
「かけで」。
関東の蕎麦は、出汁がうまいのだ。
高級店ではなくてもいい。
立ち食い蕎麦でも、関東の蕎麦の出汁が大好きで、存分に味わいたい。

店長さんが、天ぷらを揚げる際に、「入りまーす」だったか、他の店員さんに声をかける。
天ぷらを揚げながらも、お客さんと会話をして、「一生懸命揚げてるのに、お客さんと接し、他の定員さんにも指示を出す。この店長さん、すごいなぁ」と思いながら、料理を待つ。
店内を見渡すと、店員さんはきびきびと動き、定例にお客さんのフォローをする。
たまたま入ったお店で、まだ何も食っていないのに(ビールは少し飲んだ)、一生懸命な店員さんを見て、俺はすごくいい気分になった。

俺の左手、少し離れたカウンターに老夫婦が座っている。
「この辺りに、昔、師範学校がありましたよね?」。
旦那さんの方が、店員さんに話し掛ける。
「師範学校ですか?その時代のことはわかりませんが、○○大学や××大学は、この付近にありますね」。
店長さんとの会話が始まり、旦那さんはご満悦の表情。
その間、店長さんは天ぷらを揚げ、また他のお客さんから「このお漬物、おいしいですね」と話し掛けられると、「ありがとうございます」。
手を休めず、お客さんと楽しそうに会話する。
お客さんは、楽しみながら食べ、店長さんはお客さんに喜んでもらいながら働き、店長さん自身も喜びを感じているのだろう。
俺には、そんな風に感じられた。
「仕事は、こうせなあかんよなぁ」。
「相手に喜んでもらい、それが自分の喜びになる。降りてきた作業をこなすだけ…じゃあかんわ」。
自分に矢印を向けて考えてみると、俺はダメだ。
「意識を変えなくてはいけない」と、料理以外の、大切なサービスも提供された気がする。

俺の天丼+ミニ蕎麦セットが運ばれた。
「うまい。最高やわぁ」。
前日、酒を飲んだせいか、出汁が体に染み込むようだ。
「やっぱり、関東の蕎麦はおいしいわぁ」。
蕎麦を食いながら、とことん幸せを感じる。
メインの天丼がおまけのようだ。
「最高やわぁ」。
「おいしいわぁ」。
奈可川さんがお休みで軽く傷付いたが、このお店「鎌倉からり」で、俺は息を吹き返した。

さぁ、鎌倉観光だ。
お寺巡りだ。

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