(278)伊勢志摩を走る。~1日目 サイクルトレインに乗る~

サイクルトレインに乗るには、上本町駅に行かなくてはならない。
そこに向かう電車の中で、Bさんに状況と予定を説明する。
「繰り返しますが、我々は上本町からサイクルトレインに乗ります。集合時間として7時20分~7時40分が指定されています」。
真面目に聞いてるかどうかわからないBさんに説明を続ける。
「今乗ってるこの電車は、上本町に7時19分に着きます。着いてから、急いで外に出て、自転車を輪行バッグから出して、ちゃんと走れなくてもいいので、適当にフレームにホイールをはめて下さい。その後、自転車を押して走って、7時40分には集合場所に着くようにしましょう」。

上本町に着いた。
輪行バッグを含む軽くはない荷物を担いで、小走りに改札を出て、階段を駆け上がる。
「しまったぁ…」。
地上に出たのはいいが、集合場所とは少し離れているようだ。
「あまり細かいことは気にせず、すぐにやれることをやろう」。
輪行バッグを開け、フレームとホイールを取り出し、細かい調整などせずにはめる。
そして、集合場所に向かって走る。
が、その矢先、「やー、なんかおかしいんですよぉ」とBさん。
「なんやねん?次はなんやねん?」と思いながら話を聞くと、後輪をフレームにはめたところ回らないと。
「何それ?」。
ペダルを回そうと試みたが、確かに回らない。
何かがおかしいのはわかっているが、時間が無い。
検証してる場合ではない。
「余裕が無いので集合場所まで走ります。Bさんは、その状態で走って下さい」。

「僕はもう着きましたよ」とAさんからメールが入ったが、状況を説明している余裕も無い。
荷物を担いでロードバイクを押しながら、俺は集合場所に向かって走った。
ふと、「ちゃんとついてこれてるかな?」と思い、振り返ってみると、後輪が回らないため右手でサドルを持ち上げながら自転車を押して走るBさん。
Bさんは、社会的にステータスの高い仕事をしている人だが、素直に「ほんまアホやなぁ」と、笑いが込み上げてきた。

集合場所に向け千日前通りを走っていると、前から青いジャンパーを着た兄ちゃんがこっちに向かってきた。
「サイクルトレインに申し込まれた方ですか?」。
「なんで知ってんの?」と思ったが、「はい」と答える(彼は添乗員だと後でわかった)。
「すぐそこに受付がありますので」。
「はい、わかりました」。
受付の入口にAさんが立っているのが見える。
ここまでBさんがあまりにもだらしなかったので、Aさんの顔を見て少しほっとした。

高速バスの出入口だろうか。
簡易テーブルの上に名簿が置かれた受付があり、名前を伝えて奥に進む。
周りには自転車乗りの人たち。
先ほどの添乗員が皆の前で、「おはようございます!」と挨拶。
「おはようございます!」。
参加者全員、添乗員から説明を受ける。
上本町からサイクルトレインに乗るお客さんは、24名とのこと。
それを6チームにわけてサイクルトレインに乗車し、自転車を係員に渡して下さいねと。
説明を聞きながら、「あぁ、俺のせい(と言うかBさんのせい)で、会ったこともない知らない人たちまで待たされてたんやな…」と思い、申し訳なくて言葉が出ない。

添乗員に誘導され、通常の改札とは違う、駅の裏口のようなところからホームに入る。
「やっとやなぁ。サイクルトレインに乗れる。豪華な電車やったらいいなぁ」。
そんなことを思いながら、ロードのハンドルに手を添えてゆっくりと歩いた。

普通の近鉄電車の車両だった。
ちなみに、サイクルトレインは、A号車、B号車、1号車、2号車、3号車、4号車の編成。
A、B号車は自転車を積む車両。
まず、俺たちは自転車を積むためB号車に進む。
車内は、ロングシート。
その上に段ボールが置かれている。
係員の人にロードを預けると、ロードをロングシート立て掛け、隙間に段ボールをかませていた(シートを汚さないためだろう)。
後はハンドルやフレームと吊革をゴム紐で固定。
「係員の人、手慣れたもんやなぁ」。
俺はぼけっと見詰めていた。

客車に行き指定席に座る。
スマートフォンで時間を確認すると、サイクルトレインが出発するまで、まだ20分ほどある。
「それまで自由時間です」と添乗員が言っていたので、「売店でも行こかぁ」と思ったが、とりあえず一度座りたい心境になった。
朝っぱらから疲れたのだ。
Bさんがめちゃめちゃすぎて。

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