(281)伊勢志摩を走る。~1日目 イベント前日~

志摩スペイン村。
翌日の伊勢志摩サイクリングフェスティバルに参加するため、事前受付を終わらせたい。

駐車場に設けられたサイクルラックからロードバイクを下ろし、我々は臨時保管所に移動した。
臨時保管所で、再度、ロードをサイクルラックに引っ掛け、防犯のためにOTTO LOCKをかける。
「ロック解除の番号、何番やったっけ?」。
「このボタンを押してからケーブルを抜く?」。
買ってから、まだ3回しか使っていないので、いまいち使い方がわからない。
まぁ、基本的には普通のチェーンと同じなのだが、結局、俺がアホなのだ。

目と鼻の先にある事前受付所に向かう。
が、やはりイベント前日だからか?
スッカスカ。
人があまりにも少ない。
Aグループ、Bグループ、Cグループ、D…、E…と、グループ毎に受付があったが、並ぶことなくスムーズに進んだ。
受付で自分のゼッケン番号を伝え、ゼッケンと観光案内などの資料をもらう。
「とりあえず用事は済んだな」と出口に向かって歩いていると、「是非、アンケートへのご記入をお願いします」。
イベントスタッフの声が聞こえ、俺は簡易テーブルの前に足を止め、律儀にアンケートと向き合った。
アンケートの内容は、「伊勢志摩サイクリングフェスティバルを何で知りましたか?a.新聞 b.雑誌 c.ネット…」といったもの。
「自転車に関するサイトで、よく見るサイトは?」の問いに、「BIKE NEWS MAG」と書きたかったが、ど忘れして「自転車マグ」と書いた。
「自転車マグ」。
そんなサイト、存在するのだろうか。
書いといて何やけど、俺は知らない。

「アンケート書いてたんですか?」。
事前受付所を出たところで、Aさんに声を掛けられた。
少し待たせてしまったようだ。
「これからどうしましょ?ホテルに行ってもチェックインの時間はまだやし」。
「そうですねぇ。受付でスペイン村のフリーパスを貰ったので、とりあえずスペイン村を堪能しましょ」とAさん。

「ちょっと、俺、そこのロッカーにみんなのいらんもん入れたらと思うんです。今から観光するのに、ヘルメットとか輪行バッグ、どう考えてもいらんでしょ?」。
スペイン村の入口を入ってすぐのところにロッカーがあったので、俺はそう提案した。
ロッカーに行き、みんな不要な荷物を入れる。
横でBさんが、「ロッカー代の300円ぐらい、僕が出しますよ」と言っていた(わめいていた)が、どういうわけか、普通に俺がロッカー代を払った。

「うっわぁ、綺麗やん。独特な建物やん」。
「パレード始まったで。サービス精神旺盛やん」。
ちょっとした興奮を抑えながら歩く。
が、本音としては「腹が減った」。
とにかく腹が減った。
じっくりとスペイン村を堪能する前に飯を食いたい。
「こっちの方に行ったら、食べるところがありますよ」。
パンフレットのMAPを見ながら、Aさんが言った。
Aさんについていくと、レストラン。
「ここでええわ」と店に入り、メニューに目を通したところ、なんちゃらオムライス¥1,300。
そんなんばっかり。
「ぼりすぎやろ」。
「いや、観光施設の相場はこんなもんやろう」。
頭では理解している。
が、悩む。
そこで、Bさんが「僕、おごりますよー」。
ロッカー代は出さなかったけど、Bさん、good jobだぜ。

疲れているせいか、または鼻炎のせいなのか味がしない。
ただ、満腹感はあった。
ほうれん草となんとかオムライス(無駄に長い名前のメニューって、それだけで印象が悪い)を食った感想。
その後、「ビール飲んでいいですかー?」とBさん。
「好きにしたらええがな」と思ったが、上本町の売店で買った缶ビールを店内で飲むつもりのようだ。
「いや、ちょっと勘弁して下さいよ」。
「KRMさんは、モラリストですね。いいじゃないですかぁ」。
「そんなん、持ち込みになるじゃないですか」。
本気で勘弁してほしい。
常識で考えたらわかることだ。
ただ、Bさんは俺よりも年上。
50手前の男なので、「アホか!」とも言えない。
「あの、持ち込みの缶ビール、飲みたいのなら飲んだらええと思いますが、外に出て飲むとかね、この席で飲むのは勘弁してくれませんか?俺、仲間と思われるん嫌なので」。
Bさんは、缶ビールが入ったリュックを持って外に出た。
残された俺とAさんは世間話をし、時間を潰していると、Bさんご帰還。
へべれけ。

レストランを出てから「先に言っておこう」と思い、俺は正直にAさんとBさんに告白した。
「俺、遊園地、ほんまは苦手なんです。てか、乗り物があかんので、フリーパスあるんやから、AさんとBさんはいろんなの乗って堪能して下さい。俺、見てるだけで十分なんで」。
「KRMさんは、乗り物酔いするイメージありますね。ジェットコースターなんて無理っぽいですね。わかりました」とAさん。
「俺のことは、ほんまに気にせず楽しんで下さいね。ジェットコースターでもなんでも乗って下さいね。俺は見てるだけやけど」。
そこで酔っ払ったBさんが、「いいですねー、ジェットコースター。乗りましょう。僕はそういうの好きですよ!」。

Aさん、Bさんはジェットコースター、ピレネーに乗る。
俺は入口付近でふたりをぼけっと待っていたが、「酒気帯びの方、禁止」というようなことが看板に書いているではないか。
「Bさん、大丈夫か?」。
ピレネーは、えぐい。
上下逆さまになってうねりながら上ったり落ちたり。
見てるだけで怖くなった。
「俺やったら死ぬな」と本気で思った。
しばらくして、「いやぁ、怖かったですわぁ」とAさんが出口から歩いてきた。
その後ろに、ボロボロになったホセ・メンドーサのような男がとぼとぼと歩いている。

「ちょっとベンチで横にならせて下さい」。
Bさんがそういうので、「わかった、ホセ」。
「いや、Bさん」。
俺はAさんとふたりで近くのベンチに座り、なんとなく会話。
「Bさんはグロッキー、俺は乗り物あかん。でも、Aさんはひとりでいろんなもん乗って楽しんでくれたらいいですよ」。
「ひとりでアトラクションを楽しむほど、寂しいものはないですよ」。
俺、気を使ったのに、Aさんは冷静なご回答。
15分経ったので、Bさんが寝るベンチに行き、「大丈夫ですか?」と声を掛けると、「いやぁ、まだねぇ、僕はなんとかかんとかでどうたらこうたらで」と語りだしたので、「相手にすんの面倒くさいわ」。
「とりあえず、しゃべりはいいので寝てて下さい」と言い、Aさんとこれからの予定について話し合った。

「そろそろチェックインの時間になります。自分は臨時保管所に置いてるロードに乗ってホテルに向かい、輪行バッグに入れてチェックインします」。
Aさんは、「臨時保管所には警備員もいますし、僕は臨時保管所にロードを止めたままにしておいて、明日イベントに参加します。ホテルにはバスで向かいます」。
この後、ホセもAさんに賛同したが、俺は盗難される不安を抱えるのは嫌なので、ひとりでロードに乗り、ホテルまで走った。

ホテルに着いたのは15時30分ぐらい。
風呂に入った後、1時間ほどゴロゴロし、Aさん、Bさんとの待ち合わせ時間、16時40分にロビーに降りる。
しばらくするとふたりが来た。
「『小粋』っていうお店に行きましょう?評判、いいみたいです」とAさん。
「小粋」。
実は、出発前、俺の方でも志摩のうまい店を調べ上げ、リストアップしていた店だ。
「自分もそこに行きたいです」。

バスに乗り継いで鵜方駅に出て、寒い中、15分ほど歩くと小粋さんがあった。
外から見た感じ閉まっているようだが、その日は定休日ではないし、既に営業時間が始まっているはず。
「どないしましょ?」。
「ここまで来て『閉まってました』は勘弁してほしいですよね」。
3人で相談したところ、入口の引き戸を横にガラガラ。
「お、開いた」。
店内を覗くと、女性の店員さん(女将さん?)が普通に仕込みをしているではないか。
「あの、今日はお休みでしょうか?飲み食いしてもいいですか?」。
「いらっしゃいませ。カウンター席しかご用意できませんが、それでもよければ」。
「カウンターでOKです」。
後で思ったのだが、この日は予約の団体客が数組いたので、お店の前の灯りを消して貸し切りにする予定でいたのだろう。

メニューを見ると、牡蠣料理が多い。
「片っ端から食いたい」と素直に思う。
上から順番に頼み、「え、こんな味付けあるんや!?」と感動したり、「手を加えなくてもうまい。そのままでもうまい」と感心したり。
お店のスタッフの人にもかなり親切にしてもらい、嬉しい限りだ。
結局、飲みまくり食いまくりで、ひとり7,000円になったが、「それでも安いわ!」と心の底から思えた。

店を出て、Aさん、Bさんはスペイン村の温泉に行くと言う。
俺は、明日に備えて真っ直ぐホテルに帰り、ゆっくりしたいと思った。
あぁ、ついに来たのだ。
伊勢志摩サイクリングフェスティバル。
明日なのだ。
ゼッケンを手に取り、まじまじと見る俺。
眠れなくなりそうだ。

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